あの日の落書きを続けよう。

アブノーマル桃太郎 SM老夫婦と桃人間と何も悪くない赤鬼

「あぁ、婆さんや。妖艶な乳房を二つも携えたワシの婆さんや」

おじいさんは山に芝刈りに行く前にそう言った。

「うるさいジジイ!黙らないと穴という穴にキツネの脳みそで作ったスープを流し込んでしまうぞ!」

そう答えると、お婆さんは川に洗濯に出掛けた。

「あぁ!もっと虫けらを踏みにじるように罵っておくれや!」

ここはとある山奥の古い家。そこにはアブノーマルな老夫婦が住んでおったとさ。

日本むかし話でボケてみた「桃太郎」

第一章 記憶と運命のパラドックス

自分は物語の主人公になるはずだ。運命に抗う選ばれし勇者なんだ。幼き日に描いたおぼろ気な青写真は、多くの場合手の平のシワや頬のシミの数と反比例するように薄れていく。この老人も例外ではなかった。

「芝を刈るのさエンヤコラ ほどよく刈るのさエンヤコラ」

気の抜けた掛け声には日々の仕事への少しの誇りと諦めに似た溜め息が入り交じっている。

「芝を刈るのさエンヤコラ アメリカ訛りでエンヤコラ」

おじいさんはまだ知らない。自分がお爺さん史上もっとも有名なおじいさんとなることを・・・。

第二章 不協和音のレクイエム

もし桃が流れてきたら切ろう。そう思いながら洗濯すること幾年が過ぎただろうか。

輝く少女だった栄光の日々を否定するかのように腰は曲がり、へそは外れ、腎臓はポリゴンになってしまった。

親族のしがらみで否応なく婚姻した相手はドMのクソ男、何も起こらずに過ぎ行く人生。水面に写る干からびた老婆の姿を笑い飛ばしながらお婆さんは呟く。

「時は川なり(人生って嘔吐物だな)」と。

この日も、桃が流れてきた以外はいつもと何も変わらない日だった。

「ああ退屈!つまんない!この年になっても人生キツいとはね!どんぶらこ!」

その時だった!

バサバサバサ!鳥が飛び立つ!

わさわさわさ!森が揺れる!

ザザザ、サー!ヤモリがヤモる!

それはこの山で恒例のお昼の合図であった。

「おお、もうそんな時間かや。腹ごしらえでもしようかのう」

お婆さんはでんぐり返しをしながら呟くと、胸の谷間からおにぎりを取り出した。

「腹をごしらえるのは死なないためさ!おいちい」

そのあと桃の件など一悶着あってお婆さんは家に帰った。

この日の夕焼けの色は、まるでこれから出てくる赤鬼を思わせるような赤だった。後にヤモリはそう語っている。

第三章 桃から生まれたアイデンティティ

拝啓 親愛なるお婆様、お爺様

寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしですか?

桃から生まれた桃太郎です。

僕は今、お婆様お爺様に約束した通り鬼を倒し帰路についています。鬼ヶ島での激闘はとても熾烈なものでした。

鬼どもは角という角を見せびらかすように暮らしていました。私と子分たちは力を振り絞り、鬼の飲む水に毒物を混入してなんとか鬼を仕留めました。紙一重の死闘でした。

※ ps. 後世には激闘の末倒した、という感じで語り継いでください。
それが持ち帰る財宝の分け前をお渡しする条件とさせて頂きます。